KOCAGEをはじめた頃
「なんでも焼きたてが一番美味しい」
と思っていました。
焼きたて
この言葉を見るだけで
食欲がそそられます。
私たちは焼き菓子が好きではありましたが
当時はまだ
深く知っていたわけではありませんでした。
だからこそ
『焼きたては必ず美味しい』
と、盲信していたのだと思います。
オープン前のある日
サブレを試作していると
その小麦とバターが焼ける香りに誘われて
つまみ食いの手が
無意識に焼きたてのサブレへ。
サブレを触ると
その熱い感覚が伝わり
思わず手を離そうとしますが
その前に
サブレがほろっと砕けました。
焼きたてのサブレは
まず持つことすら難しい。
また
サブレの破片を食べると
思ったほど味がしませんでした。
「失敗かな」
と思い、少し置いて冷めてくると
硬くなり、口に運べるように。
歯を入れるとほろっとした食感で
香りは落ち着き
甘みとコクをしっかり感じます。
サブレは焼きたてから少し
時間を置いたほうが美味しいかな
と思いました。
しかし一概に
焼き菓子は少し経った方が美味しい
と考えるのも違う気がします。
私たちの感覚では
味わいは温度と時間の経過によって
段階的に変化していきます。
例えば、同じフィナンシェでも
焼いてからの経過で味わいが変化します。
看板商品である
焼きたてのフィナンシェは
香り高くふっくらした食感と
控えめな甘さが魅力です。
一方で
個包装したフィナンシェは
梱包して一晩以上経過しており
焼いた当日に比べて
甘みやコクが強くてしっとり食感に。
そう考えると
「焼きたてが美味しい」も
「寝かせたほうが美味しい」も
どちらか一方だけではないのかもしれません。
お菓子の状態は
時間や環境に合わせて変化します。
そしてその時々に個性がある。
『焼きたては必ず美味しい』
は、いつでも正解とは限らない。
おいしさは
ひとつの正解に固定されるわけではなく
温度や時間によって輪郭を変えていくもの。
お菓子の特性やその時の状態を知り
好みや用途に合わせて選ぶ
そんな心構えが
おいしさを楽しむ上では大事なのかな
と、思います。
そうなると
お菓子の味わいの違いを知るために
いろんな状態のお菓子を
たくさん試食しなければいけませんね。
それはまったく仕方のないことです。
そんなことを思いながら
これからもより多くの方と
出会えることを楽しみに
お菓子を焼いてお待ちしております。